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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)121号 判決

主文

原判決を破毀する。

被告人を懲役四年に處する。

理由

辯護人徳見廣元上告趣意第一點について。

原判示二の事実につき、原判決の確定したるところは、窃盗は未遂(障碍未遂)に終ったものであること明らかである。しからば、窃盗未遂犯人による準強盗行爲の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものであることは當然であるにかゝわらず、原審はその擬律において刑法第二三八條同第二三六條を適用し、以って準強盗の既遂をもって問擬したのは違法である。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、財物を得なかった點において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎないものである。しからば、強盗未遂の場合には刑法第二四三條の適用があるにかゝわらず、これと同一態様の窃盗未遂の準強盗を、強盗の既遂をもって論ずるときは、右刑法第二四三條の適用は排除せられることゝなり彼此極めて不合理の結果を生ずるに至るからである。したがって、論旨は正に理由あり、原判決はこの點において破毀を免がれない。しかし以上原審の違法は、事実の確定に影響を及ぼさない擬律錯誤の違法である。(その他の判決理由は省略する。)

以上論旨第一點の理由により、刑訴施行法第二條並びに舊刑訴第四四八條に從い、原判決を破毀し更に當裁判所において判決すべきものであるところ、原判決の確定したる事実を法律に照せば、原判示一の窃盗の所爲は刑法第二三五條第六〇條に、同二の準強盗未遂の所爲は刑法第二三八條第二三六條第二四三條第六〇條に各該當し以上両所爲は連續犯の關係にあるから、昭和二十二年法律第一二四號附則第四項の規定により、その改正前の刑法第五五條及び刑法第一〇條により重い準強盗未遂の刑に從い、尚右準強盗は未遂なるをもって、刑法第四三條本文及び同第六八條第三號により減輕した刑期の範圍内において被告人を懲役四年に處するを相當と認める。

仍って主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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